迷える仔羊はパンがお好き?
  〜聖☆おにいさん ドリー夢小説




     ◇◇◇



 「…ちゃん、ちゃん? 大丈夫?」

じわじわとした目覚めの中、まだどこかぼんやりする頭のまま、
視野の中にいる人達を確認する。
ここって、ああそっか、イエス先生のお宅だ。
イエス先生とそれから、ブッダ殿下、
じゃなくてブッダさんも心配そうにこちらをのぞき込んで……あれ?

 「大丈夫かい? 気がついた?」
 「いえあの…こちらはどちらのお嬢さんでしょか。」

イエスと向かい合う格好、
お布団の傍に座り込み、優しいお声掛けをして下さったのは。
一瞬ブッダさんと間違えたほど雰囲気が似ていたけれど、
黒々とした長い髪を腰まで垂らした、それは麗しい美人のお姉さんだったから。
つか、あれあれ、私ったら確か…………???

 「こちらはブッダの妹さんでね。
  ちゃんが濡れたまんまでは風邪を引くからって、
  着替えとか手掛けてくれたんだ。」

何でどうして師匠の家で寝かされているものか、
ぼんやり思い出しかかっている彼女へ、
イエスがそうと説明し、潤みの強い瞳も魅力的なその女性がうんうんと頷く。

 「私、ブ…ッタ兄さんに呼ばれて、
  バイト先から飛んで来た……タマコと言います。」

え?と何故だか意外そうな顔をしたイエスだったが、
はそこまで気が回らなかったようで、

 「それはすいません。で、ブッダさんはどこに?」

何気なく訊いただけだというに、一瞬ギョッとしたタマコさん、
おおうという大きなリアクションつきで仰け反りかけてから、

 「あう、いやあの、っそそそそ、そう、わたしの代わりにバイト先へ。」

言いようは苦し紛れっぽかったが、
苦し紛れのそれでもにっこり微笑うと
同性でも惚れさせるほどの美人さんなところが何ともかんとも…。
着ているものまで兄であるブッダとお揃いの、
TシャツGパンというシンプルさだったのに、

 「いやあの、そそそ、そうですか。///////」

さんを無駄にときめかせた、
嫋やかな美貌と柔らかそうな巨乳はそりゃあ見事なものだったそうで。
そのお胸を たわんと揺らしつつ、
布団の中に横たわるへの耳打ちか、やや前かがみになって囁いたのが、

 「大丈夫ですか?
  急な雨の中を駆け回ったせいで疲れがどっと出たのか、
  いきなり倒れられたと聞きましたが。」

それで横になってたのですよという遠回しに訊いたところが、

 「あ、そうだ。蛇が、蛇だか人だか、よく判らないものが…。」

やはりやはり、それなり衝撃は大きかったらしく。
あわわっと肩をすぼめただったものの、

 「それってもしかして、これじゃあないですか?」

額にビンディという変わった印を描いておいでのタマコお嬢さんが、
ぱんっと広げて見せたのは、
黒髪を結い上げやたら金銀の装飾で身を飾った……

 「人魚姫?」

…の、寸劇を知らせるポスター、
ただしぐっしょり濡れてた1枚で。
唖然としつつ指差すさんへ、うんうんと頷いたタマコさん云わく、

 「どっかから風で飛ばされたんでしょね。」

随分と古いのが貼りっ放しになってたらしいし。
ほら公演日、2年も前ですものと。
梵天氏提案の“錯覚だったんですよ”大作戦に
微妙に似たり寄ったりな手で
何とか誤魔化そうという手を打つことにした二人だったらしくって。
神通力にて女体化したその上で、
ポスターまで用意し、
それは無理なくストーリテラーを演じ切る
ブッダの“女優力”の素晴らしさへ、

 《 なんて素晴らしいんだ、ブッダvv》
 《 イエス…そうまで眸をキラキラさせないで。///////》

イエスが心の中でただただ感激し倒しており。
そっちの方こそずんと気になったブッダ様であったとか。
(苦笑)

 《 ……それにしてもマーラめ、
   何て壮大な夢を送り込んでくれたかな。》

 《 罪滅ぼしのつもりだったんじゃないのかな?》

それとも梵天氏に焚き付けられたか(どんなコネです、それ)、
意識を失ってしまったさんへ、
とりあえずの時間稼ぎと記憶の混乱を目してのことだろう、
ややこしい夢を臨場感たっぷりに見せた、外的な力があったようであり。
それもあってか、
さんとしては…蛇もどきを見たという衝撃的だった記憶を、
タマコさんの紡いだ二言三言だけで あれれ?と曖昧なものにしつつある模様。

 《 助けられたんだから善しとしようよ。》

 《 それにしたって。
   いくらイエスだけとはいえ、
   殴る蹴るという戦いに身を置く人にされようとは。》

 《 まあまあ まあまあ。》

梵天がらみ(かも知れない)ということからか、
怒らずにはいられぬらしいブッダだったのを、
イエスが何とかどうどうといなしつつ。
やや強引ながらも何とかこの危機は乗り切れそうな気配だったようでございます。
二人がこそりと胸を撫で下ろしたアパートの外では
あの激しかった夕立も嘘のように上がっての、
空もぐんぐんと明るくなりつつあった昼下がりだったのでした。







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 *いきなり別なお話が始まったみたいな仕立てにしちゃってすいません。
  でも、どっかでこういうネタも使いたかったものですから。
  聖人に暴力振るわせたのもまずかったですが、
  そこはマーラさんが仕立てた脚本ゆえと ご容赦を…。

  「私、ジョニデに似てるって。マーラさんっていい人かもっ
  「イ、イエス?」

  てーいっ、落ち着けキモサベッ!


ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv


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